賃貸借契約

賃貸借契約の種類

普通借地権

通常の借地契約は,契約期間が終了しても,契約期間終了時に建物が存在すると借地権者が更新を請求した場合や,借地権者が使用を継続した場合には,従前と同様の条件で契約は更新されたものとみなされてしまいます(借地借家法5条)。
このように,後に説明する定期借地権とは異なり,更新されることを前提とした権利が,普通借地権ということになります。
地主は,これに対して異議を述べることができます(同法5条)が,この異議が認められるのは,①地主及び借地権者が土地の使用を必要とする事情(自己使用の必要性の比較衡量),②借地に関する従前の経緯(権利金や保証金等の有無・多寡,当事者間の信頼関係を破壊するような事情の有無等),③土地の利用状況(建ぺい率,容積率,商業地域か否か,防火地域か否か等),④地主が土地明け渡しの条件として,又は土地明け渡しと引き換えに立退料の申し出をした場合におけるその申し出内容を考慮して,正当事由があると認められる場合でなければならないとされています(借地借家法6条)。
上記のうち,④立退料の申し出については,あくまでも①~③の補完要素であるため,立退料を支払うだけで正当事由ありと認められるものではなく,他の事情との相関関係によって決まることになります。

定期借地権

定期借地権とは,平成4年8月1日より施行された借地借家法で新たに創設された制度で,更新がなく,定められた契約期間で確定的に借地関係が終了するものを指します。
旧借地法の下では,定期借地権は無く,地主が借地権者に対して土地の明渡しを求めるためには正当事由が必要でした。その結果,地主が借地権設定を躊躇したり,設定時において高い権利金等の支払いが生じたりしていました。
そこで,借地借家法では,一定の範囲で更新のない借地権を認めることとして,土地を貸したり借りたりしやすくしました。

定期借地権には,以下のアからウまでの三種類があります。

ア 一般定期借地権
存続期間を50年以上と定めることを要件とする定期借地権のことを,「一般定期借地権といいます(借地借家法22条)。

イ 事業用借地権
事業目的で存続期間を10年から50年未満(平成20年1月1日以前は20年以下)とする定期借地権のことを「事業用借地権」(同法23条)といいます。

ウ 建物譲渡特約付借地権
借地権を設定した日から30年以上を経過した日に借地上の建物を借地人から地主に譲渡することを予め約束して借地契約をする定期借家権を「建物譲渡特約付借地権」(同法24条)といいます。

一時使用目的の借地権

臨時設備の設置,その他一時使用のために設定したことが明らかな一時使用目的の借地権(同法25条)には借地借家法の存続期間の規定が適用されません(借地借家法25条,借地法9条)。

2.地上権と賃借権の違い

同じ借地権であっても,建物所有を目的とする地上権は物権であり,譲渡が自由であるのに対し,賃借権は債権なので譲渡するには地主の同意が必要となります(民法612条)。
これが地上権と賃借権の違いですが,賃借権譲渡の際,地主の承諾が得られない場合には,借地借家法19条に基づき,地主の承諾に代わる裁判所の許可を得ることにより賃借権の譲渡も認められています。
したがって,財産上の価値においては,両者の間に大きな差はないと考えられています。

3.旧借地法下で成立した既存借地権と新法下で成立した借地権       の違い

旧借地法は、借地権者の立場を守ることに重点が置かれていました。

そのため、契約期間を定めていても、地主が正当事由をもって更新を拒絶しない限り、自動的に契約は更新されてしまいます。

旧借地法法では、建物を堅固建物(石造・レンガ造・コンクリート造・ブロック造など)と、非堅固建物(木造など)に区分しており、それぞれで借地権の存続期間が異なります。

 契約時の存続期間最初の更新後の存続期間
堅固建物期限の定めがない場合60年30年
期限の定めをする場合30年以上30年以上
非堅固建物期限の定めがない場合30年20年
期限の定めをする場合20年以上20年以上

新法である借地借家法において,借地権の存続期間は一律30年とされました。

ただし、地主・借地権者がこれより長い期間を定める場合は、その期間が存続期間となります。
また、契約を更新する場合の期間は、1回目の更新では20年、2回目以降の更新では10年とされました。こちらも、当事者間の合意があれば、この期間より長く設定できます。
なお、旧借地法下では堅固建物と非堅固建物で借地権の存続期間が異なっていましたが、借地借家法においてはその区別はなくなりました。

普通借家権

普通借家権は,以下で説明する⑵定期借家権,⑶終身借家権,⑷取壊し予定の建物の借家権以外の建物賃借権のことを指します。
建物賃貸借では,期間が満了しても,更新拒絶等の通知がなければ契約は終了せず(借地借家法26条1項),更新拒絶等の通知をしても,正当事由がなければ契約は更新して存続します(同法28条,正当事由ルール)。
特約によって正当事由ルールを配乗することは出来ません(同法30条)。
このように,普通借家権の場合には更新されるのが原則です。
また,平成11年の借地借家法改正において,出来るだけ賃貸借を継続させ,長期の契約を可能にするために,建物賃貸借に民法604条を適用しないものとされたため(借地借家法29条2項)建物賃貸借に長期についての制限はなく,民法604条1項の定めた上限である20年を超える期間を定めることも出来ます。
なお,普通借家権について1年未満の期間を定めたときは期間の定めのないものとみなされます(同法29条1項)。
なお,定期借家賃貸借であればこの短期に関する制限もなく(同法38条1項),どのように短い期間であっても定めることが可能です。

定期借家権

⑴で述べた通り,普通借家権の場合には,期間が満了しても更新拒絶等の通知がなければ契約は終了せず,更新拒絶等の通知をしても正当事由がなければ契約は更新して存続してしまいます(正当事由ルール)。
正当事由ルールは,かつて住宅の数がひっ迫していた時代における住宅政策の上に成立する仕組みであり,量的に十分な住宅供給がなされている現在の社会状況に照らせば借家人保護に偏りすぎており,良質な借地や借家の供給を制約していると考えられていました。
そこで,これを受けて,平成11年12月,借地借家法38条が改正され,契約更新がないとする条項(更新否定条項)の効力を認める新しい形態の建物賃貸借が創設されました。
これが,定期建物賃貸借(定期借家)です。
定期借家においては,更新の意思があるか否か,更新拒絶通知がなされたか否か,正当事由があるか否かを,いずれも問題にせず,期間が満了すれば確定的に終了する賃貸借です。
定期借家権を成立させるためには,更新否定条項が契約書において一義的に明示されていなければならないとされており,単に「定期借家制度に基づく」と契約書にあった事案で他の条項とのバランスから定期借家であることが否定された裁判例もあるので,契約時には弁護士のチェックを受けるなど,注意すること求められます。

終身借家権

高齢者の居住の安定確保に関する法律の第五章に終身建物賃貸借についての定めがあります。終身借家権とは,その名の通り,60歳以上の高齢者で,死ぬまで賃貸住宅に住み続けることができる借家権です。この終身建物賃貸借契約を締結することが出来る主体や方法は限定されています。具体的には,終身建物賃借人になることができるのは,①60歳以上の者(同居する人がいないか,又は同居者が配偶者若しくは60歳以上の親族である者)又はその高齢者と同居する配偶者で,自ら居住するために住宅を必要とする者です。終身建物賃貸人となることが出来るのは,終身賃貸事業者として都道府県知事の認可を受けた事業者(終身賃貸事業者)に限ります。そして,これらの者の間で,公正証書による等の書面によって契約するときに限って,「賃借人が死亡した時に終了する」と定めて建物賃貸借契約をすることができます。

取壊し予定の建物の借家権

借地借家法39条1項には,「法令又は契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合において、建物の賃貸借をするときは、第三十条の規定にかかわらず、建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定めることができる。」と規定されています。
そして同条2項には,「前項の特約は、同項の建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければならない。」とあります。
この規定は定期借地権の導入に伴い、定期借地上の建物の賃貸借を,定期借地権が消滅して建物が取り壊されるときに終了させる場合等を想定して設けられました。

まとめ

以上見てきた通り,土地や建物の賃貸借関係にも様々なものがあります。
特殊な借地権や借家権を成立させるためには相応の要件がありますので,弁護士にご  相談頂くのが良いと思います。


重要事項説明書

重要事項説明書とは、売買や賃貸などの不動産取引において、取引条件などの重要事項を記した書面のことです。

重要事項説明書を用いた重要事項説明(重説)は、契約前に買主(借主)に書面を交付したうえで、宅地建物取引士による口頭での説明が法律で義務付けられています(宅地建物取引業法 第三十五条)。これは、不動産取引の専門知識を持たない買主(借主)が、契約に関連する重要事項を理解したうえで契約を締結できるようにすることが目的です。また、宅地建物取引士は、重要事項説明の際に自身の宅地建物取引士証を提示しなければなりません(提示義務)。

重要事項説明書の参考資料です。重要事項説明書(賃貸)重要事項説明書(売買)賃貸借契約書

1-1.重要事項説明書を確認する時期

重要事項説明書を用いた重要事項説明は、売買や賃貸の契約が成立するまでの期間に行なう必要があります。

売買の流れ賃貸の流れ

契約○日前といった明確な時期は定められていませんが、重要事項説明書の内容は買主(借主)の意思決定に影響があることから、契約直前の実施は一般的には不適切とされています。

1-2.売主(貸主)には重要事項説明が行なわれない場合がある重要事項説明を行なう相手は買主(借主)であり、売主(貸主)への重要事項説明の実施は義務ではありません。そのため、取引によっては売主(貸主)への重要事項説明が省略される場合もあります。しかし、売主(貸主)側も契約条件や詳細な情報を十分に理解してから契約を締結するべきであり、売主(貸主)にも重要事項説明を実施するのが望ましいといえます。不動産取引では、買主・売主の双方に重要事項説明を実施し、両者が認識の相違なく契約内容を把握することで、トラブル発生のリスクを軽減できるでしょう。なお、買主(借主)が宅地建物取引業を営む不動産会社や個人である場合は、重要事項説明書の交付のみが必要で、口頭での説明義務はありません。一方、一般の買主(借主)が契約当事者となる場合には、重要事項説明の省略はできません。

2-2-1.土地や建物に関わる事項重要事項説明書には、取引対象となる土地・建物の所在地、面積など、基本的な情報が記載されます。土地と建物で、記載される内容には以下のような違いがあります。土地に関する情報所在地、地番地目地積権利の種類敷地権割合(持分割合)借地権の場合は借地権の割合や存続期間備考 など建物に関する情報所在地構造住宅の種類延床面積専有部分のある建物の場合はその詳細(家屋番号、建物の名称、間取り、建築の時期 など)重要事項説明の際、土地に関する内容は地図や公図などを用いて再度確認されます。建物については必要に応じて図面と照らし合わせながら、記載内容に誤りがないか確認されます。2-2-2.登記に関わる事項登記に関わる事項は、基本的に登記事項証明書(登記簿謄本)の権利部の内容が転記されています。

表題部と権利部

なお、売買により抵当権が抹消されるような場合でも、現時点で登記に記録されている内容はすべて重要事項説明書に記載されていなければいけません。

2-2-3.法令に基づく制限重要事項説明書には都市計画法や建築基準法など、取引対象の不動産に関する法律上の制限についても記載されます。都市計画法と建築基準法に基づく制限には、主に以下のようなものがあります。都市計画法区域区分市街化調整区域の場合の開発行為、建築行為に関して都市計画道路に関して など建築基準法用途地域地域・地区建ぺい率容積率高さ制限敷地と道路に関する制限日照や日陰に関する制限など

2-2-4.インフラの整備状況インフラとはインフラストラクチャーの略語で、一般的には産業や生活における基盤を指す言葉として用いられます。重要事項説明書では、生活に関連するインフラ(電気・ガス・飲用水・下水道)について、以下のような情報が記載されます。インフラに関する情報設置者管理者配管の設置状況配管の整備状況配管の整備予定の有無整備予定がある場合は実施予定年月日や負担金備考 など

2-2-5.災害警戒区域に関わる事項災害警戒区域とは、災害により住民の生命・身体に危害をおよぼすリスクがあると認められた土地(区域)のことです。重要事項説明書には、土砂災害や津波災害のほか、水災害履歴や液状化予測など、その土地(区域)で警戒すべき災害について記載されます。重要事項説明の際は、取引対象の物件がハザードマップ(自然災害が想定される区域や避難場所などが表示された地図)上でどのような位置に所在しているかも説明を受け、確認しておきましょう。

2-2-6.建物の性能評価や調査・診断に関わる事項重要事項説明書には、建物状況調査(インスペクション)、住宅性能評価、耐震診断などの調査や診断の実施状況、結果が記載されます。各項目でどのような内容が記載されるのかについては、調査や診断の種類により以下のように異なります。建物状況調査(インスペクション)実施の有無調査結果の概要アスベスト(石綿)の使用状況 など住宅性能評価評価を受けている住宅に該当するかの当否交付されている住宅性能評価書住宅性能表示 など耐震診断実施の有無適用されている耐震基準(新耐震または旧耐震)耐震診断の内容耐震診断を実施した機関名 などなお、新築以外の建物では、過去1年以内の建物状況調査(インスペクション)の有無や、調査結果の概要を記載する必要があります。

2-3.取引条件に関わる事項取引物件に関わる事項では、既存の情報がそのまま記載されるのに対し、取引条件に関わる事項では売主・買主間で取り決めた条件に沿った内容が記載されます。取引条件に関わる事項として記載される内容には、以下の5つが挙げられます。取引代金に関わる事項契約解除に関わる事項手付金の保全措置の定め金銭の貸借に関わる事項契約不適合責任に関わる事項

2-3-1.取引代金に関わる事項取引代金に関わる事項では、買主・売主間で合意した各種取引代金について記載されます。例えば、不動産売買では以下のような項目に関して、金額や代金授受の時期について記載されます。不動産売買の場合の取引代金の項目売買代金手付金清算金(固定資産税、修繕積立金・管理費 など)2-3-2.契約解除に関わる事項契約解除に関わる事項では、契約解除の条件や方法、解除する場合の取り決めなどについて記載されます。契約違反があった場合の違約金や損害賠償についても記載されますが、詳しい条件は対象取引の契約書にまとめられているケースが一般的です。重要事項説明の際は、契約書と照らし合わせながら、重要事項説明書の記載内容に相違がないか確認するとよいでしょう。

2-3-3.手付金の保全措置の定め手付金の保全措置とは、宅地建物取引業を営む不動産会社や個人が売主となる場合に、状況に応じて買主への手付金の返還が認められる措置のことです。買主から一定の金額を超える手付金が支払われる取引では、手付金の保全措置を設けることが法律で義務付けられています。重要事項説明の際には、手付金の保全措置の有無や概要について、宅地建物取引士から説明があります。

2-3-4.金銭の貸借に関わる事項金銭の貸借に関わる事項では、住宅ローンなどの不動産会社による融資の斡旋(あっせん)の有無や、融資承認を取得する期日といった、融資に関する情報が記載されます。融資に関する情報としては、主に以下の内容が記載されます。融資に関する情報金融機関名融資額金利借入期間返済方法保証料事務手数料

2-3-5.契約不適合責任に関わる事項契約不適合責任とは、契約内容に反している事実が認められたとき、売主が負うべき責任のことです。契約不適合責任は、「担保責任の履行」と表現される場合もあります。この項目では、主に以下のような内容が記載されます。契約不適合責任(担保責任の履行)に関する内容売主(貸主)が事前に告知するべき欠陥や瑕疵売主(貸主)の責任の範囲契約不適合と認められた場合の措置保証や保険契約の有無 など

2-4.その他の事項取引の内容によっては、取引物件や取引条件のほか、その他の事項として以下の内容が記載される場合があります。区分所有建物に関わる事項その他の特約事項

2-4-1.区分所有建物に関わる事項取引物件が分譲マンションのような区分所有建物の場合、「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」に基づいた重要事項を説明する必要があります。区分所有建物に関する重要事項としては、以下が挙げられます。区分所有建物に関する重要事項敷地の権利の種類借地権の地代共用部分における管理規約や使用細則の内容専有部分における管理規約や使用細則の内容専用使用権に関する管理規約や使用細則の内容修繕積立金の月額、滞納額、積立総額管理費の月額、滞納額修繕積立金や管理費以外の費用管理委託先の情報、管理形態修繕の実施状況の記録実施が予定されている修繕工事

3-1.取引物件に関わるチェックポイント取引物件に関わる部分では、主に以下の内容を確認しましょう。登記事項証明書(登記簿謄本)や公図などと比較して記載内容に誤りがないか法令に基づく制限に問題がないか(将来的な建て替えや増改築の制限など)インフラの整備状況や費用負担について明確に記載されているか土地や建物の現況が明確に記載されているかマンションの場合、マンション管理規約や使用細則の範囲まで確認できるか水害(洪水、雨水出水、高潮)ハザードマップの記載状況 など

3-2.取引条件に関わるチェックポイント取引条件に関わる部分では、事前に取り決めた内容に相違がないかも含めて、以下のような内容を確認しましょう。代金以外の必要な金銭の目的や金額、授受の時期などが明確に記載されているか手付金や契約解除の条件が適切かつ明確に記載されているか契約不適合責任に関わる措置内容が明確に記載されているか不明瞭な特約や容認事項が記載されていないかなかでも、特約や容認事項は認識の相違が発生しやすい部分でもあるため、契約後のトラブルを避けるためにもしっかり確認することが大切です。特約事項や容認事項にどのような記載がされるのか、関連団体が公表する文章例なども併せてチェックしておくとよいでしょう。

4-1.不明点や疑問を抱えたまま契約に進まない重要事項説明を受け、契約を締結すると、重要事項説明書の内容に承諾したものとみなされます。契約後のトラブルを避けるためにも、重要事項説明書の内容は細部まで熟読・理解しておくことが大切です。記載内容や説明内容に不明点・疑問点があれば、必ず契約に進む前に宅地建物取引士(不動産会社)や専門家に相談しましょう。なお、2021年(令和3年)3月30日より、オンラインでの重要事項説明(通称:オンライン重説、IT重説)が可能となり、近年は重要事項説明書が電子書面で発行される機会も増えてきました。オンラインで重要事項説明が実施される場合、対面ではなくビデオ通話によって重要事項説明を受けるため、聞き間違いや聞き逃しに注意が必要です。

4-2.事前に重要事項説明書のコピーをもらっておくと安心不動産会社に依頼すると、重要事項説明が実施されるタイミングより早く、重要事項説明書のコピーをもらえる場合があります。事前に重要事項説明書のコピーを受け取り、内容に目を通しておくことで、前もって不明点を確認したり、重要事項説明当日に聞きたい内容をまとめたりできるでしょう。オンライン重説が採用され重要事項説明書が電子書面となる場合でも、必要があれば紙での書面発行が可能かどうか確認しておくとよいでしょう。まとめ不動産の重要事項説明書は、売買契約や賃貸借契約の締結前に、取引に関する重要事項を買主(借主)に説明するためにまとめた書面です。取引対象となる物件情報や取引条件のほか、不動産の利用に関わる個別の要件が記載されるため、記載内容は必ず契約前に細部まで確認しましょう。買主(借主)だけでなく、売主(貸主)も重要事項説明書の内容を把握しておくことで、その後の契約をスムーズに進められます。不動産売却で「失敗したくない」「損をしたくない」という場合は、サポート体制が充実した不動産会社に相談し、状況に応じた適切なアドバイスを受けることをおすすめします。不動産の査定価格には、数百万円もの差が生じる可能性もあるため、複数社の査定結果や対応を慎重に比較検討し、最も有利な条件で売却できる不動産会社を見つけましょう


媒介報酬【賃貸の場合】

媒介報酬の相場は、家賃の0.5カ月~1カ月

賃貸の媒介報酬の上限は『家賃の1カ月分+消費税』と定められていますが、不動産ポータルサイトを見ると、相場は『家賃の0.5カ月~1カ月分+消費税』となっています。そこで、家賃別に媒介報酬の目安を計算すると、下表のような金額になります。

媒介報酬の目安(消費税込み)

家賃媒介報酬+消費税
0.5カ月分の場合1カ月分の場合
5万円2万7500円5万5000円
7万円3万8500円7万7000円
10万円5万5000円11万円
12万円6万6000円13万2000円
15万円8万2500円16万5000円

※消費税10%で計算


サブリースとは

サブリースとは、貸主が所有する物件をサブリース会社が借り受け、入居者に転貸するという仕組みの賃貸経営方法です。サブリースでは、多くの場合、家賃保証や滞納保証が付保されるため、貸主は賃貸経営の手間をかけず、比較的安定した収入が得られます。

その一方、サブリースにはデメリットやトラブル事例も少なからずあるため、仕組みやリスクを正しく理解したうえで検討するようにしましょう。

サブリースとは?契約の仕組み

サブリースとは、賃貸住宅の管理方法の1つです。管理方法にはいくつか種類がありますが、その中でも賃貸住宅の管理を一任できるサブリースは、最も貸主の負担が少ない賃貸形態といえます。

2つの賃貸借契約

サブリースの仕組み

サブリースは、2つの賃貸借契約で成り立ちます。1つは、所有者とサブリース業者が締結する契約。そしてもう1つは、サブリース業者と入居者が締結する契約です。所有者と入居者は直接、賃貸借契約を結ばないため「転貸」という形になります。

管理受託方式との違い

所有者と入居者が直接、賃貸借契約を締結し、管理のみ管理会社に委託する方法を「管理受託方式」といいます。サブリース契約では、サブリース会社が賃貸借契約の当事者となりますが、管理受託方式における管理会社の役割はあくまで委託業者です。管理会社は、管理のみを請け負います。

空室保証・滞納保証

サブリースは、契約内容に応じて、所有者に対し「空室保証」や「滞納保証」が付保されるのが一般的です。この2つの保証により、空室の間も、入居者に滞納があった場合も一定の家賃収入が保証されます。

サブリースのメリット・デメリット

サブリースには、貸主の手間や負担を減らし、安心も付帯するというメリットがある一方、デメリットもあります。

サブリースのメリット

安定した賃貸収入が得られる

管理だけを委託する場合、オーナーの「負担」は軽減しますが、空室や赤字に対する「不安」までは解消されません。サブリースは、空室保証や滞納保証があるため、収益の見通しが立ちやすく、安定した賃貸経営ができます。契約内容によって空室時の保証範囲は変化するため、契約内容がどうなっているのかは事前に必ず確認しておきましょう。契約内容によって空室時の保証範囲は変化するため、契約内容がどうなっているのかは事前に必ず確認しておきましょう。

賃貸経営初心者にも安心

サブリース契約では、入居者にとってのオーナーはサブリース業者となります。入居者間で発生したトラブルや滞納などの諸問題に際して対応するのも基本的にはサブリース業者となるため、初心者でも安心して賃貸経営を始められるでしょう。

手間がかからない

このような賃貸管理に関する業務を不動産会社が一手に引き受けてくれることから、賃貸経営の手間を抑えることができます。

サブリースのデメリット

管理委託より手数料が高い

サブリースは、賃貸住宅の管理のみを委託する場合と比較して、手数料が高額です。いずれも委託する業務や不動産会社によって異なりますが、管理委託費の相場が賃料収入の5%前後である一方、サブリースの手数料は賃料収入の10〜20%程度です。手数料が高額な分、管理委託と比べて管理の労力や手間が抑えられます。

入居者を選べない

サブリースでは、所有者が入居者を選ぶことはできません。それは、サブリース会社を通した転貸だからです。所有者はサブリース会社に対して物件を貸しているため、入居者である転貸人を選ぶ権限はサブリース会社にあります。

家賃保証が見直される可能性がある

サブリースには、契約内容に応じて「家賃保証」が付保されるのが一般的というのは先述のとおりです。ただ、家賃保証によって保証される賃料は見直される可能性があり、保証には免責期間が設けられているケースがほとんどです。当初、契約した金額が保証され続けるとは限りません。

また、基本的に、修繕費用はオーナーの負担となりますのでご注意ください。東急リバブルのサブリースプランでは、オプションで、一定の設備において1工事50,000円(税別)まで修理の手配と費用の負担をするサービスを用意しています。

サブリースのトラブル事例

サブリースは、オーナーの手間をなくし、安定した賃貸経営をするために効果的な賃貸形態です。しかし、契約の複雑さから次のようなトラブルも起きています。

サブリース業者による不正行為

金融庁には、過去に、次のようなサブリース業者の不正行為が報告されています。

  • 自己資金のないオーナーの預金通帳の残高を改ざん
  • 一定の年収基準を満たすようオーナーの所得確認資料を改ざん
  • オーナーの口座に金融機関の融資審査に必要となる資金を振り込み
  • 売買契約に必要となる諸費用等を捻出 するため、実際の売買価格よりも水増しした価格による売買契約書を金融 機関用として作成

これらに共通するのは、オーナーへの融資を無理に通そうとしたサブリース業者による不正行為です。このような事例に関しては、サブリース業者が悪質ということが大きな要因であることはもちろんですが、オーナー自身も「借り入れられるだけ」でなく「返せるか」を重視して融資金額を決めることが大切です。

金融機関による不正行為

サブリース業者のみならず、金融機関による不正行為も報告されています。金融庁によれば、金融機関が、融資の条件としてオーナーにとって不必要なカードローン・定期預金・保険商品等を販売する抱き合わせ販売を行っていた事例があったとのことです。

サブリース業者と金融機関が協力し、賃貸住宅の賃料や入居率について改ざんし、必要以上に多額の融資が実行された事例もあるといいます。

サブリース問題を受けて創設された「サブリース新法」とは?

サブリース契約におけるトラブルの発生をうけ、2020年、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(サブリース新法)が施行されました。同法により、次の3つが規制されるようになっています。

  1. 誇大広告の禁止
  2. 不当な勧誘の禁止
  3. 契約締結前における重要事項説明および説明書の交付

現在では、法律でサブリース契約を煽るような広告や強引な勧誘は禁止されており、サブリースの契約(マスターリース契約)前には、次のような事柄が事前に説明されています。

  • 家賃改定条件
  • 契約解除条件
  • その他マスターリース契約のリスク

サブリースを選択するのに向いているのは?

貸主の負担がかからず安定した経営ができるという特徴があることから、次のような人がサブリースに向いていると考えられます。

賃貸経営が初めての人

賃貸経営は、家を貸し出して終わりではありません。空室対策や修繕計画、出口戦略など、所有者がやらなければならないこと、考えなければならないことは膨大です。サブリースは、サブリース業者が所有者に代わって募集から入居中、退去時までの対応をしてくれるため、賃貸経営が初めての方に適していると考えられます。

できる限り負担を減らしたい人

すでに賃貸経営をしていて、その業務の煩雑さや忙しさに負担を感じている方もサブリースを検討してみましょう。サブリースを選択することで投資物件を増やしやすくなり、リスクの分散にもつながります。

安定した経営をしたい人

どんな事業にも共通することですが、基本的に、賃貸経営における収支は変動します。想定した入居率を維持できなければ、赤字になるリスクもあります。滞納保証や家賃保証が付保されているサブリースは、安定した経営をしたい人にも適しています。

サブリースの解約は可能?

サブリースに限ったことではありませんが、賃貸借契約は原則的に貸主の都合による解約ができません。とはいえ、解約ができないということではありません。

借地借家法

借地借家法第では、建物賃貸借契約の更新やその要件について次のように定められています。

第二十六条

建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

第二十八条

建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

これらの条文から、借主は1年前から6ヶ月前までの通知をしたうえで解約ができるものの、貸主都合による解約には「正当事由」が必要であると解釈できます。

解約に必要な「正当事由」とは

何が正当事由になるかについての判例は多数ありますが、一般的には1年間から6ヶ月前までに告知をしたうえで居住者の数ヶ月分の賃料や引越し代を負担することで、立ち退きを了承してもらえるケースが多いものです。

サブリースのマスターリース契約をする際には、あらかじめ解約の条件や違約金、立退料の扱いについてよく確認しておくようにしましょう。

サブリース契約の注意点

ここまでお伝えしてきたサブリース契約の仕組みやリスクを踏まえ、契約の前には次の点をあらかじめ確認しましょう。

所有者自身も事業計画やリスクを理解する

サブリースでは、賃貸経営の業務の大部分をサブリース業者に担ってもらえます。しかし、サブリース業者に一任して良いということではなく、投資判断をするのは所有者に他なりません。契約内容や事業計画について所有者自身が正しく理解し、契約内容や契約期間中のリスクもあらかじめ把握しておきましょう。

融資額が「返済可能」かシミュレーションする

融資を受けるにあたって大事なのは「借入可能」ではなく「返済可能」であることです。当初の想定収入のみならず、5年先、10年先……に保証される賃料が減額になる可能性も考えたうえで、返済期間中、事業収入だけで返済していける金額であるかどうか綿密なシミュレーションをしましょう。

サブリース会社を選ぶポイント

サブリース会社を選ぶうえで大前提となるのは、安定した事業をしていて、行政処分履歴などがないことです。この点に不安があると、長く、安定した賃貸経営ができないおそれがあります。

サブリース会社は、所有者にとって、ともに事業を進めていくパートナーのような存在です。所有者に代わって入居者募集や管理をしていくにあたり、賃貸仲介や賃貸管理の豊富な実績も求められます。契約前には、契約書に家賃改定や契約解除の条件が明記されており、所有者に対してわかりやすく説明してくれるサブリース会社かどうかも確認しましょう。

まとめ

サブリースは、所有者(オーナー)の経営負担を大幅に軽減し、安定した経営が目指せる賃貸形態です。ただし、保証される賃料は経年につれて減額する可能性があり、解約には正当事由が求められるなど、注意点もあります。各種保証や解約方法を正しく理解したうえで検討しましょう。