賃貸不動産経営管理士

賃貸不動産経営管理士とは

賃貸不動産経営管理士は、「賃貸住宅管理に関する知識・技能・倫理観」を持って業務にあたる、賃貸不動産管理の専門家です。

賃貸住宅を借りる側・貸す側両方の希望や期待に応えていくために設置された国家資格です。

賃貸不動産経営管理士が求められた背景

もともと賃貸不動産管理に関しては、法整備がきちんとされていませんでした。しかし近年賃貸不動産は増加の一途をたどっており、管理の重要性が重視されるようになってきたのです。

特に問題視されているのは、

・サブリースをめぐるトラブルの深刻化

・適切な不動産管理がなされていないことによるクレームの複雑化

以上の2点で、これらの問題を早期に解決することも、賃貸不動産経営管理士が求められる要因となりました。

こういった背景から設置された賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅の住人が安全・安心な生活を営めるよう、高度な専門知識や技能をもって業務を行います。また、家主(大家)から管理業務の委託を受け、入居者を集めたり、トラブルの解消に努めたりということも担います。

賃貸不動産経営管理士が国家資格になるまで

前項のように、賃貸不動産に対する管理体制の重要性が広く認識されるに従い、賃貸不動産経営管理士の存在も次第に重要視されていきます。

もともとこの資格制度は、一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会というところにより、2007年に設立された民間資格でした。

その後、国家資格化を視野に準備が進められ、2011年に「賃貸住宅管理業者登録制度」が施行、続いて2016年に国土交通省告示により、この制度における賃貸不動産管理士が公式に位置づけられました。それによって、民間資格から「公的資格」と認識されるようになったのです。

そして2020年に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(通称『賃貸住宅管理業法』)」が成立、さらに2021年国土交通省令により、賃貸不動産経営管理士は晴れて「国家資格」となりました。

「業務管理者」としての賃貸不動産経営管理士

2021年6月から、賃貸住宅管理業務を行う賃貸住宅管理業者は、管理する不動産が200戸以上になる場合、「賃貸住宅管理業の登録」をしなければならなくなりました。

200戸未満の場合は、登録は任意となりますが、この登録をした業者は、「業務管理者」というものを事務所ひとつにつき1人以上配置しなければならない、という賃貸住宅管理業法による定めがあります。

この業務管理者というのは、そういった名前の資格があるわけではなく、いわゆる「立場」を表すものです。そして業務管理者になるための要件のひとつが「賃貸不動産経営管理士の資格を持っていること」となっているのです。

業務管理士としては、以下のような業務において「管理・監督」を行います。

・法第13条による、管理受託契約の重要事項説明と、重要事項説明書の交付

・法第14条による、管理受託契約書の交付

・賃貸住宅の維持・保全・賃貸住宅に係る金銭管理

・法第18条による、帳簿の備付けなどに関する事項

・法第20条による、家主(大家)への定期報告

・法第21条による、秘密保持に関する事項

・入居者からの苦情処理

・その他国土交通大臣が定める事項

ポイントは「直接行う」必要はなく、あくまで「管理・監督」を行わなければならない、という点です。

賃貸不動産経営管理士の仕事内容

前項では、「業務管理者の立場」として行う賃貸不動産経営管理士の業務の一部をご紹介しました。

他にも、前述したように賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅の「借り手側(賃貸住宅の入居者)」と「貸し手側(家主・大家・オーナー)」双方に対しての管理・支援を業務としています。

賃貸住宅の管理における専門家でありながら、税務・法律・設備管理の知識についても持ち合わせている賃貸不動産経営管理士の仕事は、多岐に渡ります。

借り手側・貸し手側双方に対して、「入居者募集・入居準備」「入居中」「契約終了時」という段階においてそれぞれどのような業務があるのかを細かく見てみましょう。

借り手側(賃貸住宅の入居者)に対する業務

入居者を募集する営業業務や物件案内から始まり、入居を希望する人に対しては、入居審査を行ったり、貸し出す物件の点検を行ったりという対応が発生します。入居申込後は、鍵の引渡しや入居の立会いまで、入居者をサポートします(重要事項説明や契約書交付など一部の業務は宅地建物取引士の独占業務)。

入居者のいる賃貸物件では、賃料などの収納・建物の巡回や清掃・設備管理・トラブルやクレームの対応・更新の意思確認などを行います。住人との関わり合いも大きな仕事となるのです。

契約終了時には、退去の立会いや敷金などの精算・原状回復費用の算定および原状回復工事の手配などを行います。

貸し手側(家主・大家・オーナー)に対する業務

賃貸物件のオーナーに対しては、不動産運用に関する経営コンサルタントの立場を担います。

たとえば、オーナーから管理業務の依頼を受けたら、まずは市場調査を行い、周辺地域の賃料の相場などを調べて、適正な家賃価格をオーナーに提案するということも業務のひとつです。

その地域でのニーズに合った賃貸物件となるよう、企画提案をしていくこともあります。

入居者募集の段階では、募集に関する提案・経営支援・資産運用提案を行ったり、入居審査の調整を行ったりします。

入居中の物件に関しては、空室管理や賃料の滞納への対応・送金業務を行い、オーナーに管理状況の定期報告もします。オーナーからの信頼を得られるように業務を積み重ねていきます。

入居者の契約終了時には、解約に伴う連絡や調整・原状回復についての協議をオーナーと行います。場合によっては、リフォーム工事の提案といったものもしていきます。

宅建士・管理業務主任者・マンション管理士との違い

不動産業界での資格として、他によく知られているものとしては、「宅地建物取引士(以下、宅建士)」「管理業務主任者」「マンション管理士」が挙げられます。

これらと賃貸不動産経営管理士との違いはどこにあるのでしょうか?

この中でも宅建士は、「不動産」というもの全体に対しての業務が多く、土地や建物の売買や賃借といった取引において代理や媒介を務めます。

その点、残りの3つの資格はすべて名称に「管理」という言葉が入っていることもあって、どれも不動産の管理業務が主なのだろうという予測はつきますが、区別はつきづらいといえるでしょう。

簡単にいうと、賃貸不動産経営管理士が「賃貸マンション」を扱うのに対し、残りのふたつである管理業務主任者とマンション管理士は「分譲マンション」を扱うという点に、大きな違いがあります。

また管理業務主任者は、分譲マンションの管理業務を行い、マンション管理士は、分譲マンションの管理組合に対して指導やアドバイス・コンサルティング的な業務を行います。

それぞれ業務の範囲や内容は異なりますが、言い換えればダブルライセンスやトリプルライセンスを狙うことで、不動産業界においてより幅広い活躍範囲が得られるということになるでしょう。

賃貸不動産経営管理士資格を得ることによるメリット

不動産業界で活躍できる

賃貸不動産経営管理士が1番活躍できるのは、もちろん不動産業界です。前述したように、業務管理者となるための要件のひとつであるため、不動産管理業者においてはこれからもニーズは高まるといえるでしょう。

賃貸管理のエキスパートであるという立場を活かし、入居者・オーナーのどちらに対しても中立の立場で、双方の満足度を上げるための活躍が期待されています。

賃貸経営に役立つ知識が得られる

不動産を持っていて、賃貸経営を行おうという方にとっても、賃貸不動産経営管理士になるための資格勉強をすることによって得られる知識は、大変役立ちます。管理会社にまかせるのではなく自主管理を行おうという方には、特に有用なものとなるでしょう。

就職や転職、日々の暮らしに役立てられる

賃貸不動産経営管理士の資格勉強で得られるのは、「住まい」という日常生活でもっとも身近に存在するものに関する知識や技能です。

賃貸住宅の契約を交わす、賃貸住宅に住むという経験は、たいていの人が人生で複数回あることでしょう。そのなかで何かトラブルや困ったことがあったとき、的確な行動が取れるというメリットにつながります。

不動産業界に就職や転職を考えたときにも、役立つはずです。前述したように、宅建士・管理業務主任者・マンション管理士といった不動産業界の他の資格取得とあわせることで、さらに活躍の場は広がります。