高度地区の種類

高度地区とは

建物の高さに関する制限は、絶対高さ制限、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限、日影規制、高度地区の6つが存在します。高度地区はそのうちの1つです

高度地区は、都市計画法によって「用途地域内において市街地の環境を維持し、または土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度または最低限度を定める地区とする」と規定されています。高度地区の制限内容は自治体ごとに異なり、多くの場合は高さ制限に加えて北側に斜線制限が設けられています。

また、高度地区は建築物の最低限度の高さを定める「最低限度高度地区」と、最高限度の高さを定める「最高限度高度地区」の2つに分類されています。

最低限度高度地区とは商業地やオフィス街などにおいて、その土地の有効利用を図るために一定の高さに満たない建築物を建ててはいけない地区のことです。一方、最高限度高度地区では一定の高さ以上の建築物を建ててはいけないという決まりであり、そのエリアの住環境を良好に保つ目的で定められています。住宅を建てる場合に注意したほうがよいのは最高限度高度地区のほうです

最低限度高度地区は商業地やオフィス街など、最高限度高度地区は住宅街に適用されることが多い

建築基準法の中には絶対高さ制限や北側斜線制限といった規制がありますが、高度地区においてもこれらの制限が適用される場合がほとんどです。高度地区と他の規制が重なった場合は、より厳しいほうの内容が適用されます。

なお、高度地区の規定内容における北側の斜線制限と、北側斜線制限は混同されやすいのですが厳密には異なるものです。都市計画法によって定められる高度地区は自治体によって内容が異なるため、地域によっては北側の斜線制限が設定されていないこともあります。一方、建築基準法によって定められる北側斜線制限は一定の用途地域内で必ず適用されるものです。

また、北側斜線制限や道路斜線制限、隣地斜線制限においては、ある位置から建物を見たときの、全天に対する空の割合である「天空率」を用いることで斜線を超える建物を建築可能ですが、高度地区では天空率制度を利用できないという点が異なります。

【建物の高さに関する制限】

  • 絶対高さ制限
  • 道路斜線制限
  • 隣地斜線制限
  • 北側斜線制限
  • 日影規制
  • 高度地区 ※最低限度高度地区、最高限度高度地区の2種類あり

高度地区のメリット・デメリットは?

高度地区のメリット

高度地区(最高限度高度地区)に家を建てるメリットは、周辺に高い建物がなく良好な景観が保たれていることや家の通風・採光を確保しやすい点です。

高度地区のデリット

一方で、建物の高さの制限があるため間取りや外観のデザインが制限されてしまうというデメリットもあります。高さ制限があるため3階建ての住宅にするのが難しくなったり、屋根の形の自由度が狭まってしまったりするおそれがあります。

デメリットを活かした設計の工夫でメリットにもなる

高度地区のメリット・デメリットは表裏一体ともいえます。建築上の高さ制限があることについては注意が必要ですが、設計の工夫によって制限を活かすことも可能です。例えば、北側の斜線制限により敷地内に建物を建てられない場所が出てくる可能性がありますが、その場所を有効活用して駐輪場や物置を設置することができるというよさがあります。また、北側の斜線制限を避けるため隣家と建物の距離を離した場合、採光や通風のよい家をつくりやすい点に加え、防犯・防火上の安全性も高くなります。建築上の条件が制限される土地と聞くとマイナスのイメージを持つ方が多いかもしれませんが、人々の住環境をよくするために都市計画法で定められたものなので、良好な景観をはじめ享受できるものがたくさんあることをぜひ知っておいてください

最高限度高度地区は周囲に高い建物がないため良好な景観が保たれている

高度地区の種類は?

高度地区は自治体によって第1種、第2種、第3種といったように、規制内容のレベルに応じた区分が定められています。一般的に住宅地では最高限度高度地区の規制内容が適用されますが、その中でも「第1種高度地区」の規制内容が最も厳しくなっています。住宅を建てる場合は、第1種の規制内容には特に注意したほうがよいでしょう。

自治体によって制限の内容は異なる

自治体によって高度地区の内容は異なるため注意しましょう。例えば、同じ東京都内でも高度地区の制限内容は区市町村ごとに異なります。自治体によって第1種のみ存在しないケースや、区分が6つ以上存在するケースなどさまざまです。高度地区自体を設けていない市区町村もあります。

ここでは、東京都足立区の高度地区の区分例を紹介します。

第1種高度地区

隣地境界線の上で、地盤面から5mの位置を基準とし真北方向から高さ0.6対奥行き1の勾配が設定されています。この斜線内に建物を納めて建築する必要があり、斜線からはみ出して建築することはできません。

どの自治体においても第1種高度地区の規制は最も厳しく定められている

第2種高度地区

隣地境界線の上で、地盤面から5mの位置を基準とし真北方向から高さ1.25対奥行き1の勾配が設定されています。また、水平距離が8mを超える範囲においては真北方向から高さ0.6対奥行き1の勾配が設定されています。この斜線内に建物を納めて建築する必要があり、斜線からはみ出して建築することはできません。

第2種高度地区では、第1種と比較すると高さ制限が緩和されている

第3種高度地区

隣地境界線の上で、地盤面から10mの位置を基準とし真北方向から高さ1.25対奥行き1の勾配が設定されています。また、8mを超える範囲においては真北方向から高さ0.6対奥行き1の勾配が設定されています。この斜線内に建物を納めて建築する必要があり、斜線からはみ出して建築することはできません。

第3種高度地区では中高層の住居も建築可能

高度地区の調べ方

高度地区で家を建てるときには建築上の制限がかかってくるため、土地を購入する前に確認しておいたほうがよいでしょう。

高度地区の分布は役所のホームページで公開されているので、個人がインターネットを活用して簡単に調べることができます。また、販売されている土地に関しては、不動産会社から説明がなされるのが一般的です

高度地区について調べたい場合は、各自治体のホームページの「都市計画情報」や「都市計画マップ」などを参考にしてください。また、多くの場合は分布のほか高さ制限の計算方法等も紹介されています。土地を探す際は目を通しておくとよいでしょう。

インターネットでも調べることはできますが、自治体の窓口に直接問い合わせて教えてもらうことも可能です。

高度地区の情報はネットで簡単にチェックできる。役所に足を運んだり資料を取り寄せたりする必要はない。

高度地区と混同されやすい高度利用地区とは? 違いを解説

高度利用地区もまた都市計画法で定められた地域地区の1つにあたりますが、低層の建物が密集している地区を再開発し、高層ビルやマンションを建設できるようにすることを目的としています。
高度利用地区では、建物の容積率および建ぺい率、建築面積、敷地面積等の最低・最高限度が定められ、これによって地域の利便化や防災機能の向上が期待できます。
高度地区と高度利用地区では規制内容が異なるので注意しましょう。

大きな建物を建てて土地を高度利用するのが高度利用地区の特徴

土地を購入する前に知っておきたいポイントは?

第1種高度地区に家を建てるときは要注意

自治体によって規制内容に差はあるものの、一般的な一戸建て住宅を建築する際に第2種、第3種の規制はそれほど懸念する必要はありません。しかし、第1種高度地区の場合は建築条件がシビアになってくるので注意しましょう。高さ制限の内容を知らないまま土地を購入して後悔しないように、事前に規制内容をチェックしておくことがポイントです

第1種に区分された土地は特に高さ制限や北側の斜線制限が厳しい。

土地が2つ以上の地区にまたがる場合もある

土地の半分は第1種高度地区、もう片方は第2種高度地区といったように、同じ敷地内に種別の違う地区が混在するケースも稀にあります。その場合はより厳しい制限内容が適用されます。建築上の工夫が必要となるため、できれば土地を購入する前に設計者に相談するとよいでしょう

土地が複数の地域地区、用途地域にまたがるケースもある

狭小地で家を建てる場合は工夫が必要

狭小地で家を建てる場合、いわゆるペントハウスなど高さを活用した3階建ての家にすることが多いです。しかし、高さ制限が設けられた狭小地では高さを活かした建築が難しくなる可能性があります。半地下をつくったり、居室をつくれない部分を納戸にしたり、北側斜線の斜めの部分を活かして窓を設けたり、設計の工夫が必要です。高さ制限のある土地では設計力のある、実績豊富な建築会社を選んで依頼することをおすすめします

高さ制限のある狭小地では間取りの問題と高さ制限をクリアするために工夫が必要

高度地区について正しく知ろう

土地を購入して建築が始まってから高さ制限があることを知り、理想の家が建てられなかったと後悔しないために、自分が買おうとしている土地の特性について事前にしっかりと把握しておくことが大切です。今回紹介した高度地区以外にもさまざまな建築制限があるので、知っておいて損はありません。親切な不動産会社であれば高さ制限などについても購入前に丁寧に教えてくれると思いますが、役所の用途地域マップなどを調べ、確認するとよいでしょう

まとめ

高度地区とは建築物の高さの最高限度または最低限度を定める地区

規制内容は自治体ごとに異なり、第1種の制限が最も厳しい

家の外観や間取り決めに関わるため、土地購入前に制限内容を確認したほうがよい