確定測量とは

確定測量とは?必要なケースと知っておくべき基礎知識を解説

確定 測量

確定測量とは、自分の土地と隣接地との境界を明確にする作業のことです。

土地や建物の売却時には、基本的には必ず必要になります。確定測量を行うべき理由は大きく2つあり、1つ目は土地の価格を正確に把握するため。2つ目は、トラブルを避けるためです。もし確定測量を行わず、土地の境界や面積があいまいなまま売却しようとすると、

  • 隣人の一人が境界線が違うと言い出し、もう少しで売れそうだったのに売れなくなった
  • 本当はもっと高値で売れたのに、土地の面積を少なく伝えてその分損をしてしまった
  • 買主が家を建てようとした際に、隣人と柵の位置でもめて関係が悪くなってしまった

などのように、近隣の人や買主とのトラブルが発生したり、損をしたりするかもしれません。

ただ、確定測量はあまり馴染みのない調査なので、具体的にどんな作業を行うのか、何をすべきなのかなどが分からず不安に思いますよね。

そこでこの記事では、あなたが確定測量の重要性や他の測量との違いについて正確に理解できるように、以下のようなポイントについて詳しく解説します。

▼この記事でわかること

  • 確定測量の概要
  • 確定測量が必要な理由
  • 確定測量が必要なケース/不要なケース
  • 費用相場
  • 作業の流れと期間
  • 事前に知っておきたい注意点

この記事を最後までお読みいただくと、確定測量を依頼する方法や、トラブルなく測量を終えられるポイントが分かります。

目次

  • 1.確定測量とは
  • 2.確定測量は基本的に必要
  • 3.オススメなケースと例外的に不要なケース
  • 4.確定測量の費用相場
  • 5.確定測量を行うための6つのステップ
  • 6.確定測量の実施前に知っておきたい4つの注意点
  • 7.まとめ

1.確定測量とは

確定測量(境界確定測量)とは、自分の土地と隣接地との境界を明確にする作業のことです。

測量時は「土地家屋調査士」と呼ばれる専門の調査士が土地の境界を調べて、「確定測量図」または「確定実測図」と呼ばれる図面を作ります。

隣接地所有者の立ち会いのもとで作られた「確定測量図」を使って取引を行えば、家を建てる範囲やブロック塀の設置場所などの、土地をめぐった隣人トラブルが発生する可能性をぐっと減らすことができます。

上記のような理由から、確定測量は、土地や建物を売却する際、隣接地との境界を明らかにするために必須の作業と言えるでしょう。

名前だけを見ると少し難しそうな感じがしますが、持っている土地の境界や面積をはっきりとさせる調査だと考えると、イメージがしやすいかもしれません。

以下のような4つの特徴があり、中でも重要な点は、測量時に隣接地所有者の立ち会いが必要なことです。

あなたが現在所有している土地は、周囲を他の土地や道路などに囲まれており、自分の土地との境界がはっきりと分からない場所もあるのではないでしょうか。お隣との明確な境界が分からない場合は、どこまでを自分の土地として売っていいのか悩みますよね。土地の面積を明確にするためには、隣接地の所有者にも調査に立ち会ってもらい、お互いの土地の境界線をはっきりとさせる必要があります。立ち会いのもとで境界を明確にすれば、古い資料を見ながらお互いに意見を出し合って境界を決めていくため、後からトラブルになることもありません。「ここまでは自分の土地」と思っていても、実は隣の人の土地だった!といったケースは意外と多く存在します。

2.確定測量は基本的に必要

先述の通り、いくつかの例外をのぞき、確定測量は基本的には必ず行うべき作業です。とは言っても、「確定測量って本当に必要なのかな?」とまだ疑問に感じている方も多いかもしれません。そのような疑問を解決するため、ここでは確定測量が必要な理由を2つ紹介します。

土地の売却価格を正確に把握するため

トラブルを避けるため

土地の売却をトラブルなく済ませるためにも、理由を1つずつ確認していきましょう。

2-1.土地の売却価格を正確に把握するため

確定測量を行う最大の目的は、土地の正しい面積を求め、売却価格を正確に把握することです。土地の価格は、その面積によって異なります。土地の価格は1坪いくらなどの単位面積あたりの価格で決まるため、土地が広くなり、面積が増えるほどに値段が高くなる仕組みです。当然ですが「土地が広い=値段が高い」ということですね。そのため確定測量を行わず、土地の面積が不明確なまま売却することで、損をしてしまうケースも多いです。たとえば120㎡の土地を、確定測量をしなかったため100㎡と誤って売却した場合について考えてみると、20㎡分は価格に含まれず、売主が損をすることになります。ただ少しイメージしにくいので、ここでは仮に1坪30万円として計算してみますね。20㎡は坪にすると約6坪なので、30万円×6坪=180万円となり、売主は確定測量をしないことで、なんと180万円も損してしまうことになります。ずれた面積が坪1桁であれば損は少なくて済みますが、差がもっと大きくなったら、損をする金額も大きくなってしまいますよね。売却を決める前に確定測量を行い、正確な面積を求めていれば、もう少し高い値段で売却できたかもしれません。特に1坪あたりの価格が100万円以上などの高い地域では、少しの面積の差が売却価格に大きな違いを生むことになってしまいます。売却前に確定測量を行えば、土地の面積や売却価格を正確に把握でき、大きな損をせずに済みます。

2-2.トラブルを避けるため

確定測量は、売却後のトラブルを避けるためにも行われます。境界線が不明確なことによって起こるトラブルは意外と多く、たとえば以下のようなものが発生しやすいです。

土地の買主が家を建てようとしたところ、隣人と塀の設置場所でもめた

土地を売ろうとしたところ、隣人が境界線が違うと言い出し売却できなくなった

せっかく土地を売ろうとしたのに、隣人とのトラブルのせいで売れなくなったら困りますよね。また買主が決まっても、確定測量を行っていなかったことで上記のようなトラブルが発生した場合は、買主から損害賠償請求をされたり、契約を解除されたりするケースもあります。

損害賠償や契約解除が発生する理由は、境界を明確にしないまま売却したことによるトラブルは売主の責任となるためです。このようなトラブルは、確定測量を行い境界を明確にすることで、発生する可能性がかなり低くなります。確定測量が済んでいれば、売る側も買う側も安心して取引できるでしょう。

3.オススメなケースと例外的に不要なケース

上記の通り、確定測量は土地の売却時には基本的に必ず行うべき作業です。ただし中には、例外として測量を行わずとも売却ができるケースも存在します。ここでは確定測量が必要なケースと不要なケースについて、それぞれ3つずつ紹介します。もしかしたら不要なケースに当てはまっているかもしれないので、一度目を通してみてください。

3-1.確定測量がオススメなケース

確定測量が特に必要なケースは、以下の3つです。

以下、詳しく見ていきましょう。

3-1-1.土地や建物の売却時

確定測量が必要となる最も多いケースは、土地や建物の売却時です。土地や建物を売る際には、買主にどこまでが自分の土地かを正確に伝える必要があります。もし境界が明確ではないまま土地を売ると、買主や隣人とのトラブルが発生するかもしれません。そのため土地や建物を売却する際はなるべく確定測量を行った方がよいですが、中でも以下のような場合には、必ず行うことをおすすめします。

お隣と土地の一部を貸し借りするうちに、どちらのものか分からなくなってしまった場合

フェンスや塀がなく、隣接地との境界が不明確になっている部分がある場合

確定測量は、売主・買主がお互いにトラブル発生を防止できる効果的な手段です。契約前に買主から確定測量図の提出を求められることも多いので、土地や建物の売却の際には、必ず行った方がよいでしょう。

3-1-2.相続時に相続税を物納する場合

確定測量は土地や建物を相続し、相続税をその土地や建物で物納する場合にも必要になります。ちなみに物納とは、その名の通り現金ではなく物で税金を納めることです。ただ確定測量とは一見関係なさそうなので、「税金を納めるだけなのに、どうして確定測量が必要なの?」と思うかもしれません。確定測量が必要になる理由は、境界が明らかではない土地は物納できないと決められているからです。国税庁によれば、「境界が明らかでない土地は物納に不適格な財産である」とされており、物納申請をする際には、境界が確定された測量図や、境界確認書と呼ばれる書類の提出が必要になります。そのため、確定測量をしていない場合は物納はできません。相続税を物納する可能性がある場合は、申請段階になってから慌てないように、事前に準備しておくと安心ですよ。

3-1-3.境界杭(境界標)が見つからない場合

土地の周辺に境界杭が見つからない場合も、確定測量を行った方がよいケースの1つです。境界杭(境界標)とは、以下の図のような矢印が入った杭などのことです。

境界杭

境界杭は、境界線となる場所に打ち、隣接地と自分の土地を区別するためのものです。

以下の図のような場所に打ち込まれているので、ぜひ探してみてください。

境界標の場所

境界杭は、一般的には隣の土地との境界部分に設置されているケースがほとんどです。しかし長い間測量を行っていなかった場合は、破損したり、地面に埋まってしまったりして見つからないこともあります。境界杭は隣接地との境界を示す証拠となるため、どこまでがお互いの土地かでもめるなどの、隣人とのトラブルの発生防止に役立ちます。もちろん今後土地を売る予定がある場合や、土地の値段を確認しておきたい場合などにも活用できますよ。境界杭が見つからない場合は、一度確定測量を行っておくと様々な面で役立つでしょう。

3-2.確定測量が例外的に不要なケース

まれではありますが、一部例外として、確定測量が不要なケースもあります。ここでは以下の3つのケースを説明します。

確定測量が不要なケース

以下、詳しく見ていきましょう。

3-2-1.土地の値段よりも測量費用の方が高くなる場合

土地の値段よりも測量費用の方が高くなる場合は、売主と買主で話し合った結果、測量が必要ないと判断されることが多いです。

確定測量の費用は、土地の広さや形状などによっても異なりますが、およそ35万円〜70万円かかります。

測量時は土地の全ての境界を明らかにする必要があるため、土地が広いほど費用は高くなります。たとえば一般的な住宅地と、牧場のような場所を比べてみると、牧場のように広い場所の方が測量に時間がかかるだろうと考えられますよね。このように土地があまりに広い場合は、測量の手間が増えることから費用が高くなりがちです。広大な土地を売却する場合は、土地の売却価格よりも、確定測量の費用の方が高くなってしまうかもしれません。売却価格よりも高い測量費用を支払うことになっては、大きな損をしてしまいますよね。よって上記に当てはまるケースでは、売主と買主で話し合った結果、確定測量なしで売却が行われることになります。

3-2-2.境界が明確な場合

近年分譲されたばかりの土地など、既に境界が明確になっている場合も、確定測量が不要とされることが多いです。境界が明確かどうかを判断するには、以下のような基準を参考にしてみてください。

  • 近年分譲されたばかりの土地
  • 前の所有者が測量をしてから日が浅い土地

上記のような土地で既に境界が明確な場合は、確定測量をする必要がない可能性が高いです。この場合は「地積測量図」と呼ばれる図面を法務局で取得してみてください。「地積測量図」とは、土地の面積や面積の計算方法、測量した年月日などの情報が記載された土地の測量図のことです。新しい図面が出てきて混乱してしまうかもしれませんが、確定測量によって作成される「確定測量図」とは別のものです。地積測量図と確定測量図との主な違いは図面の入手方法で、記載されている内容はほぼ変わりません。

  • 地積測量図:公的な図面。法務局で入手可能
  • 確定測量図:測量の依頼者である土地所有者が所持

そのため、既に境界が明確になっている場合は、地積測量図が証明となるので、新しく確定測量を行う必要がないのです。確定測量図の代わりに、地積測量図を使用しましょう。ただし、測量してから長い年月が経っている地積測量図は、計測方法の精度などの問題により、記載された情報が正確ではないことも多いです。正確ではない測量図では、自分の土地の面積が思ったよりも小さく書かれているかもしれません。「ここまでが自分の土地だと思うけど、少し不安だな」と感じている場合や、境界が少しでもあいまいになっている場合は、確定測量を依頼することをおすすめします。

3-2-3.行政が管理している土地が隣接している場合

官有地や道路・川などの行政が管理している土地が隣接している場合も、確定測量が不要とされることが多いです。その理由は、行政が管理する土地では、立ち会いまでに長い時間がかかることが多いためです。先述の通り確定測量の際には、隣接地所有者の立ち会いが必要となります。お隣がすべて人が住んでいる土地の場合は、協力してもらえれば1日で済むケースも多いです。ただ行政の立ち会いが必要な場合は、お隣のようにすぐに来てもらうことができず、立ち会いまでに多くの時間がかかってしまうのです。具体的な期間はその時の状況によっても異なりますが、測量完了までに4ヶ月以上はかかると考えた方がよいでしょう。隣接する土地のうち、1ヶ所でも行政が管理する土地があれば、測量図の完成は大幅に遅れてしまいます。そのため売主と買主が話し合った結果、確定測量なしで売却されるケースも多いのです。

4.確定測量の費用相場

確定測量の費用相場は、およそ35万円〜70万円です。先述の通り、確定測量をしなかった場合は正確な面積が分からないため、売却時に損をしてしまうこともあります。一見高く思えますが、場合によっては買主に費用の一部を負担してもらうこともできるので、一部の例外を除き、売却時には必ず依頼しましょう。ただ値段にかなり幅があるため、「一体いくらかかるのだろう」と不安に感じている方も多いかもしれません。費用にかなり幅がある理由は、官有地と接しているかどうかで、作業内容が変化するためです。費用は官有地と接していない方が安く、

官民調査なし(官有地と接していない):35万円〜50万円程度

官民調査あり(官有地と接している):35万円〜70万円程度

が相場の金額となります。ただし測量費用は、官有地と接していない場合も高額になるケースも多いです。測量費用は、土地の広さや形状などによっても異なります。たとえば自分が土地を調べるとして、とても広い土地や、複雑な形をしている土地だったら、調査に多くの時間がかかりそうですよね。測量の手間や時間などの点から、以下のようなケースでは、費用が高額になりがちです。土地が広い土地が

複雑な形をしており測量しづらい

数多くの土地と隣接している

急いでおり短い納期で依頼した

そのため、費用の中でも「測量業務」や「立ち会い業務」など一部のみ高額になるケースもあります。費用については、具体的な作業内容が分からないと把握しづらい部分もありますので、詳しくは以下の表を参考にしてみてください。

確定測量の料金目安

5.確定測量を行うための6つのステップ

確定測量を行う際には、「土地家屋調査士」と呼ばれる専門家に調査を依頼することになり、測量完了までには1ヶ月〜4ヶ月程度かかります。しかし専門家に依頼するとは言っても、あまり馴染みのない作業なので、測量の流れや必要なものなどが分からず不安に感じますよね。確定測量の流れは以下の通りで、大きく6段階に分けられます。ここでは確定測量を行う際の流れについて、以下の6ステップに分けて解説します。

確定測量の流れ

それぞれの作業にかかる期間の目安についても紹介しますので、1つずつ確認していきましょう。

5-1.【STEP①】土地家屋調査士に測量を依頼する(期間:1〜2日)

確定測量を行う場合は、必ず専門家である「土地家屋調査士」に調査を依頼する必要があります。土地家屋調査士とは、不動産の登記に必要な土地や家屋の調査をする専門の調査士のことです。普段お世話になる機会は少ないですが、インターネットで検索して調べるほかに、不動産会社や法務局で紹介してもらうこともできます。「確定測量が必要だ!」と分かってから調べはじめると、思ったように見つからないかもしれません。測量が必要だなと感じはじめたら、なるべく早く準備に取り掛かりましょう。近くで最近測量を行った人がいれば、その人に聞いてみることもおすすめです。

5-2.【STEP②】必要な書類を揃えて調査士に提出する(期間:1週間程度)

次に、必要な書類を揃えて土地家屋調査士に提出します。確定測量を行う際には、事前に土地に関するいくつかの資料を揃える必要があります。必要な書類はその土地の状況によっても異なりますが、具体的には以下のような書類の用意を求められることが多いです。

  • 公図
  • 登記簿謄本
  • 共同担保目録
  • 地積測量図
  • 建物図面
  • 道路境界確定証明書
  • 境界確認書

上記のような書類は、近くの法務局を訪れて集めることになります。全て集めるまでにはある程度の時間がかかるため、余裕を持って準備を行ってください。

5-3. 【STEP③】現況測量を行う(期間:2〜3週間程度)

資料集めが終わった後は、土地の測量を開始します。ここで行う測量は「現況測量」と呼ばれるもので、まだ境界確定は実施しません。現況測量とは、既存の杭やフェンス、塀、調査を依頼した土地所有者の指示などによって仮に境界を設定し、現況の面積を求める測量のことです。確定測量とは異なり、隣接地の所有者の立ち会いは必要ありません。まずは資料などをもとに仮の境界を定めておきます。場合によっては仮杭の設置を行うこともあります。

5-4. 【STEP④】立ち会いのもと境界確認を行う(期間:1ヶ月程度)

次に、隣接地の所有者や行政の職員の立ち会いのもと、境界の確認を行います。確定測量では必ず隣接地所有者の合意を得る必要があるため、測量士や仲介会社、もしくは土地の所有者本人が隣接地所有者に連絡をして、立ち会いを依頼することになります。もし隣人との仲が悪いなどトラブルが発生しそうな場合は、依頼した土地家屋調査士に相談してみてください。隣接地所有者との調整を、土地家屋調査士に行ってもらえる場合があります。境界確認時には収集した資料や現況測量図を利用し、境界についての確認作業を進めていきます。

5-5. 【STEP⑤】確定測量図の完成・捺印(期間:1ヶ月程度)

境界確認の完了後は、土地家屋調査士が「確定測量図」と「境界確認書」と呼ばれる書類を作成します。そして隣接地所有者と土地所有者が「確定測量図」と「境界確認書」に署名と捺印をすることで、確定測量図が正式な図面として成立することになります。また境界確定後は、境界を明確にするため、境界杭(境界標)の埋設作業が行われます。

5-6. 【STEP⑥】登記申請(期間:STEP⑤と合わせて1ヶ月程度)

最後に、登記申請を行います。登記は確定測量図と境界確認書を法務局に提出することで行われ、土地家屋調査士に手続きを依頼することができます。登記申請手続きまで行ったら、確定測量は完了です。

6.確定測量の実施前に知っておきたい4つの注意点

確定測量は頻繁に行うものではないため、実施するタイミングや、他の図との違いについて疑問を感じている方も多いでしょう。事前に知識を頭に入れておけば、「失敗した!」「事前に分かっていれば」といったトラブルを減らすことができますよ。ここでは、確定測量の実施前に知っておきたい4つの注意点を紹介します。

確定測量の注意点

以下1つずつ説明するので、確定測量を行う前に一度目を通してみてください。

6-1.買主が決まる前に早めに測量を行う

確定測量は買主が決まる前に、早めに済ませておきましょう。早めに行うべき理由は、測量に想像以上の時間がかかってしまうケースも多いためです。確定測量は、一般的には1〜2ヶ月程度あれば問題なく終了します。ただ一度トラブルが発生すると、なかなか確定測量図の作成までたどり着けません。起こりやすいトラブルとしては、以下のようなものが挙げられます。

隣接地所有者が立ち会いに合意してくれないなどの、思わぬ隣人トラブルなどが発生した

土地家屋調査士の都合によって、希望通りの日程に調査を行えなかった

このようなトラブルが発生すると、1〜2ヶ月では調査が終わらず、長いと4ヶ月以上かかるケースもあります。そのため、買主が決まってから測量を行い、予想以上の時間がかかった場合は、契約をキャンセルされてしまうかもしれません。たとえば買主が決まってから確定測量を行い、4ヶ月以上も時間がかかったとします。もし土地を買う立場だとして考えてみたら、「こんなに時間がかかるのだったら、今ならまだキャンセルできるし、やはり違う土地にしようかな」と思ってもおかしくありませんよね。買主が決まる前に測量を終えていたら、スムーズに売却を済ませられたかもしれません。先述の通り、土地家屋調査士は不動産会社や法務局などで紹介してもらうこともできます。今すぐに土地を売らない場合でも、見積もりを依頼するなどして、早めに依頼先を選んでおくことも重要です。

6-2.測量士ではなく、土地家屋調査士に依頼する 

確定測量を行う際は、必ず「土地家屋調査士」と呼ばれる専門家に測量を依頼する必要があります。「測量を行うのだから測量士でもいいのでは?」と思うかもしれませんが、確定測量は土地家屋調査士にしか行えません。土地家屋調査士と測量士の違いは「登記ができるかどうか」で、確定測量などの登記が必要な測量を実施する場合は、土地家屋調査士に依頼する必要があります。測量を依頼する際は、必ず土地家屋調査士であることを確認してから問い合わせを行ってください。

6-3.隣接地所有者と越境の覚書を締結する

確定測量では隣接地の所有者にも立ち会ってもらい、土地の境界を明確にします。しかし確定した境界によっては、建物の軒や塀などが隣の土地にはみ出してしまうケースも少なくありません。はみ出しているものが植木などの場合は簡単に対処できるかもしれませんが、屋根など既に建っている家の一部の場合は難しいですよね。上記のように建物等の一部が隣の土地にはみ出している場合は、

越境部分を取り壊す

越境部分を認め、再築する場合は越境しないとの覚書を締結する

のどちらかの方法を選択することになります。「越境部分を認め、再築する場合は越境しないとの覚書を締結する」とは、「今はみ出ている部分は仕方がないけれど、新しく家を建てる場合は、はみ出さないように設計します」という意味です。些細な出来事によってお隣との関係性が悪くならないように、はみ出してしまう場合はお互いのルールを決めておきましょう。ちなみに覚書とは、簡易的な契約書のようなものです。書面に取り決めた内容を記し、お互いの住所や氏名などを書いて1通ずつ保管します。お隣と仲が良い場合は、「書類なんて面倒だから、口頭で約束するのではダメなの?」と思うかもしれません。しかし口約束は、時間が経つと忘れてしまったり、当事者が亡くなった場合に内容が分からなくなってしまったりと、トラブル発生の原因になってしまいます。実際に、測量に関する事例として、「数代前の人が越境に対する取り決めをしたけれど、親から聞いた内容と隣人の主張が違う」といったトラブルも発生しています。越境が認められる場合は隣接地所有者とよく話し合い、双方が合意できる内容の覚書を締結しておきましょう。また土地を売った際は、その内容を買主に伝えておくことも重要です。

6-4.他の測量図との違いについて把握しておく

測量図には、確定測量図以外にも複数の種類が存在します。特に土地の売却を行う際には様々な測量図が出てきて、「結局どれを使うの?」と混乱してしまう方もいるでしょう。実際に不動産取引の際に使用できる図は「確定測量図」ですが、場合によっては他の図面を使うケースもあります。取引の前に、それぞれの図の違いを知っておいても損はありません。ここでは、

  • 確定測量図
  • 地積測量図
  • 現況測量図

の3つの測量図について、それぞれの特徴を解説します。

6-4-1.確定測量図とは

確定測量図とは、隣接地所有者の立ち会いのもと、土地の境界を確定させた測量図のことです。土地家屋調査士と呼ばれる専門家が調査を実施し、完成した測量図と境界確認書に隣接地所有者が署名・押印することで、はじめて確定測量図として成立します。つまり確定測量図が既にある土地は、隣接地所有者の承認を得ており、境界が明確になっている土地と言えます。よって確定測量図は最も信用できる測量図と言われ、不動産取引の際には、確定測量図が必須となるケースがほとんどです。

6-4-2.地積測量図とは

地積測量図とは、登記所に申請書類として保管されている測量図のことです。先述の通り、地積測量図は確定測量図に近く、近年作成されたものであれば代用できる場合もあります。しかし地積測量図は現在に至るまでに様々なルールの変更を経ており、古い時代に作成されたものは、その精度に問題があることも多いです。また地積測量図では隣接地所有者の合意が必須ではないため、合意の有無も不明であることが多いです。そのため不動産取引ではほとんどの場合、地積測量図ではなく、確定測量図の提出が求められます。

6-4-3.現況測量図とは

現況測量図とは、現況を単に図面化した測量図のことです。測量の際は、既存の杭やフェンス、塀、調査を依頼した土地所有者の指示などによって仮に境界を設定し、現況の面積を求めます。確定測量図との違いは、測量時に隣接地の所有者の立ち会いが必要なく正確性に欠ける点です。現況測量では隣接地所有者との境界確認作業は行われないため、確定測量図と比較すると信用度に欠けることから、正式な図面としての使用は難しいとされています。現況測量図はある程度の面積を把握するためだけの、仮の測量図だと考えるとよいでしょう。

7.まとめ

この記事では、確定測量の概要や、流れ・注意点などの基本情報について解説しました。確定測量は隣接地との境界を明確にし、土地の正確な面積を求めるために高確率で必要となる作業です。必須作業ではありませんが、土地の売却時には買主から提出を求められることも少なくありません。確定測量は基本的に2ヶ月程度で終了するものの、場合によっては4ヶ月以上かかることもあります。