1. コインランドリー経営のメリット
コインランドリー経営とは、店舗に業務用の洗濯機や乾燥機の設備を導入して利用者から利用料を得るビジネスで、次のようなメリットがあります。
・狭い店舗面積でも始めやすい
・ランニングコストがあまりかからない
・安定収入が期待できる
・節税につながる
1-1. 狭い店舗面積でも始められる
コインランドリーの店舗の標準的な広さは20坪程度の物件が多く、都市型の小さな店舗では10坪程度からでも始めることができます。もちろん、コインランドリーは洗濯機および乾燥機が稼ぎますので、店舗面積が大きくなるほど売り上げは伸びます。
ただし、店舗面積が大きければ、洗濯機や乾燥機の設置台数も増え、初期投資も増加します。売り上げを増やすためには店舗を広くしたいところですが、コインランドリーは広すぎると効率が落ち、利回りは低下する恐れがあります。
1-2. ランニングコストが小さい
無人店舗でもできることから、店員を雇って常駐させる必要がありません。人の雇用が難しく人件費も高くなっているなかで、大きなメリットです。また開業時に初期投資は必要ですが、それ以降は大きな投資は必要ありません。
ただし、乾燥機などの電気代は常にかかります。機器の故障も不定期ですが起こりますので、こうしたコストを踏まえた収支計画はしっかり立てることが大切です。
1-3. 高い利回りが狙える(収益性が高い)
コインランドリー経営の収入は店舗の大きさにもよりますが、需要がある立地であれば、20坪程度の店舗面積で月60万~80万円ほどです。したがって、年間の売上にすれば720万~960万円ほど期待できます。
初期費用として機器購入などに4500万円程度かかり、表面利回りは16~21%程度と、アパート経営よりも高い利回りが狙えます。ただし、この表面利回りは売上に対する設備投資の利回りであり、土地代や建物の建築費は含まれません。
コインランドリーを利用する人はリピート率が高く、固定客になってくれる傾向があります。比較的景気にも左右されないため、需要がある立地で始めれば、安定的な収入が見込まれます。また、天気の影響を受けやすく、雨の日が多いと乾燥機の売上が伸びます。
1-4. 退去や不払いのリスクがない
コインランドリー経営は、自営による土地活用のため、テナント(借主)の退去リスクがありません。
家賃の不払いリスクもなく、テナントからの家賃の値下げ交渉なども生じえないという点が特徴です。
また、自営による土地活用であることから、経営者の才覚次第で売上を大きく伸ばすこともできます。家賃のように収入の上限が決まっていない点がメリットです。
さらに、コインランドリーは顧客が増えていくことで売上も伸びていきます。地域に根ざし、長く営業を続けていくと認知度が向上していき、自然と利用者も増えていきます。
1-5. 土地を保有していれば節税につながる
コインランドリー経営は相続税の節税対策にはなりません。ただし、不動産の相続税評価額は現金よりも低いため、コインランドリーに供している土地や建物を保有している場合には、売却して現金化するよりも相続税対策になっているという考え方はできます。
2. コインランドリー経営のデメリット
一方で、デメリットもあります。
2-1. 4000~5000万円の初期費用がかかる
コインランドリー経営は、土地と建物を所有していたとしても、初期投資に4000万~5000万円の開業資金が必要となります(初期費用の詳細については後述)。
2-2. 参入障壁は高いとは言えず、競合が現れやすい
コインランドリーを経営するために免許などは不要のため、競合も参入しやすい面があります。コインランドリーの商圏である2㎞圏内に、最新設備を備えた新たな店舗が出店すれば、固定客を奪われかねません。
2-3. 完全な無人化ではない
コインランドリーは基本的に無人店舗で経営できます。ただし、定期的な清掃、洗剤の補充、機器のメンテナンス、クレーム対応などに人手が必要となります。手間を省くため業者に頼むか、コストを抑えるため自分で行うのか検討する必要があります。
2-4. 所有する土地に需要があるとは限らない
コインランドリー経営の成功の鍵を握るのが、立地です。自分の所有している土地が、コインランドリーを使う人が見込めない立地であれば、無理に始めることはやめたほうがよいでしょう。
2-5. 収入の保証があるわけではない
コインランドリーは自営の土地活用であるため、アパート経営のような安定した家賃収入とは異なり、収入が不安定です。今月の売上が60万円あったとしても、来月の売上も60万円ある保証はありません。経営者に経営の才覚や努力が求められるため、一般的な土地活用に比べると難易度は高いです。
3. コインランドリー経営の初期費用の内訳
コインランドリーは、20坪の標準的な店舗で、洗濯機8台と乾燥機6台で合計14台程度の機械を設置することが一般的となります。
乾燥機を半分近く設置する理由は、コインランドリー経営において乾燥機が稼ぎ頭だからです。コインランドリーは「雨が降ると空からお金が降ってくる」とも言われており、雨の日に売り上げが伸びます。雨の日には、洗濯物を乾燥機で早く乾かしたいというニーズがあることから、乾燥機を求めてくる顧客が増えるのです。
コインランドリー経営にとって、乾燥機は非常に重要なアイテムとなっており、洗濯機と同じくらいの数を設置することが一般的となっています。
3-1. 洗濯機や乾燥機の機材購入費:2000~2500万円
洗濯機は、1台あたりおおむね150万円程度が相場です。洗濯機のなかには乾燥機付き洗濯機もあり、乾燥機付き洗濯機は1台あたり300万円程度となります。一方、乾燥機は1台あたり60万円程度です。
一般的に20坪程度の店舗の場合、機械設備の購入費用は2000万円~2500万円程度が相場です。
【20坪店舗での機器購入例】
・洗濯機4台:600万円
・乾燥機付き洗濯機4台:1200万円
・乾燥機6台:360万円
・両替機1台:30万円
計2190万円
3-2. 内装工事費:1400~1600万円
機器以外には、店舗内の給排水衛生工事や内装工事の費用が発生します。そうした工事の費用は、20坪の店舗で1400万~1600万円程度です。
機械設備と工事費用のほかにも、チラシ作成費やのぼり旗の設置など宣伝にかかる費用を200万円ほど見込んでおくとよいでしょう。
3-3. 店舗の建設費:20坪なら1600万円程度
所有している更地にコインランドリーを建てる場合、店舗の構造は一般的に「鉄骨造平家建て」となります。
鉄骨造店舗の建築費相場は、坪70万〜90万円程度です。20坪の店舗で坪80万円の建築費で建てると、建築費は1600万円程度となります。
土地の購入から始める場合は当然、土地の購入費もかかってきます。その分、利益を出すハードルも高くなりますので、慎重な収益のシミュレーションが必要です。
また、店舗を借りて出店することもできます。その場合、「仲介手数料」と「保証金」がかかります。仲介手数料は、家賃の1カ月分です。月20万円の物件に入居する場合は、20万円の仲介手数料がかかります。保証金は退去時に戻ってくるお金ではあるものの、出店時に貸主に支払う必要があります。保証金の月数は地域によって異なりますが、店舗は6カ月(4~8カ月)程度の物件が多いです。月20万円の家賃で保証金が6カ月分だとすると、120万円が必要となります。
4. コインランドリー経営を成功に導くポイント
4-1. 複数の業者に相談する
コインランドリー経営を実際に始めるには、専門の業者に相談するとよいでしょう。機器の購入から立地の調査、経営プランの作成まで様々な面でサポートしてくれます。
ただし、一社に相談しただけで決めるのではなく、なるべく多くの会社の提案を聞いて、比較することが大切です。
4-2. 店舗を大きくし過ぎない
コインランドリーの商圏は、店舗から半径2km圏内です。また、洗濯機や乾燥機が最も稼働している時間帯は、午前中の10時~12時までの2時間程度といわれています。つまり、コインランドリーの売り上げのほとんどは、半径2km圏内の「限られた人たち」による午前中の「限られた時間」で構成されているということです。
洗濯機や乾燥機を置きすぎれば、午前中のピーク時にすら利用されない機械も発生してしまうため、無駄が多くなってしまいます。コインランドリーは広すぎると遊んでしまう機械設備も増えるため、店舗は大きくしすぎないほうが良いと考えるべきでしょう。
投資効率を考慮すると、店舗面積は10坪~20坪程度の小さな店舗で始めたほうが無難です。初期投資額を少なくし、借入金も減らすことができれば、経営リスクも低くすることができます。
4-3. 需要のある立地か慎重に見極める
コインランドリー経営の成否は立地で決まると言ってもよく、活用する土地に需要があるかどうか見極めることが必要です。
次のような立地であれば、コインランドリーに適していると言えるでしょう。
- ファミリー層が多く住んでいるマンション街
- 共働き世帯が多い住宅地
- スーパーや大型商業施設などの近く
- 視認性のよい場所にある
- 駐車場スペースがある
ファミリー世帯が多く住むマンション街の近くでは、コインランドリー需要があります。マンションに住むファミリー世帯には、子供の靴や大きな布団など、家では洗濯しにくい洗濯物も多く発生します。
またペットを飼っている家庭では、ペット用品の選択需要もあります。共働き世帯も、家事負担を減らすためにコインランドリーを利用することが多いです。
立地としては、スーパーや大型商業施設の近くなど、人が多く集まる場所が適しています。コインランドリーは、多くの洗濯物を持参するために車で来客してくる人が多いです。そのため、店舗は車道からの視認性が良く、駐車スペースもある土地が適しています。
4-4. 収支計画をしっかりと立てる
具体的で現実的な計画を立てましょう。機器の故障に伴う修理代や買い替えなど、将来を見据えた収支計画にする必要があります。業者に作成してもらった場合でも、収入の見込みについて根拠を尋ね、現実的な計画になっているのか、しっかりとチェックしましょう。